歯科衛生士、残業に関する4つのポイント

歯科衛生士が就職・転職活動を行う際に知っておきたい、残業に関する4つのポイント

歯科衛生士として就職・転職活動を行うときに気になるポイントの一つとして、残業が挙げられます。例えば、残業の多さはどうなのか、残業時間は給与に反映されるのか、残業は強要されないのかといった点が気になることが多いのではないでしょうか。しかし、就職・転職活動を行う際には残業について直接は聞きにくいもので、また、どのような基準で残業について判断すればよいのか困ることは多いものです。
この記事では、歯科衛生士として働くうえで大切な残業に関して知っておくべきポイントを4つに絞って紹介します。是非、この記事を参考にしていただき、就職・転職活動に活かしてください。

Ⅰ.歯科衛生士と残業の原因

歯科衛生士は残業が多いという声を耳にすることがあります。しかし、実際には歯科衛生士の残業時間は歯科医院・クリニックによってばらつきがかなり大きいものです。一般的な残業時間の考え方としては、月々の残業時間が10~20時間は普通程度の残業時間、月々の残業時間が40時間以上はかなり多くの残業時間とされています。この時間を参考にして、残業が多いかを判断してみましょう。
そして、歯科衛生士に残業が多い原因は大きく3つあるとされています。下記の3点に着目することで残業の多さを大まかに把握することが出来るでしょう。
1:診療時間の延長
歯科衛生士の就職・転職先として多いのは、歯科医院・クリニックではないでしょうか。これらでは診療時間が決まっているものの、実際には診療時間を越えて診療をすることや、受付時間から遅れて患者さんが来院することがあります。もちろん、患者さんの診療が終わらなければ診療時間を越えても閉院することが出来ませんので、結果的に残業に繋がってしまう場合が少なくありません。
もちろん、時間通りに診療が進んでいるかも大切なポイントです。歯科診療においては急患等がなければスケジュール通りに進みますが、スケジュールが溢れてしまうほどに予約を受け付けることや、十分な診療時間を確保せずにスケジュールを組んでいることが稀にあります。これによって診療時間が延長することがあります。
急患を随時受け入れているような歯科医院・クリニックでは、診療時間を越える傾向が強くなります。一方で、完全予約制であれば診療時間内に診療を終えることが多いものです。そのため、歯科医院・クリニックのHPなどから情報収集するだけでなく、実際に受付時間を越えて患者さんが来院しているかを見に行くことも大切です。これらの点に着目することで、残業時間の目安をつけることができます。
2:歯科診療で用いた器具の片付け
 歯科衛生士の仕事には、歯科診療で用いた器具の片付けが含まれていることがあります。歯科診療においては様々な種類の器具を大量に用いますが、それらは全てその日のうちに片づけます。診療時間が終わりに近づくにつれて片付けも少しずつ行うことも多いですが、最後の患者さんの診療が終わるまでは全ての片付けを始めることが出来ません。そのため、診療時間が遅くなればそれだけ残業時間が多くなる可能性があります。
 片付けの体制は歯科医院・クリニックによってそれぞれ異なります。片付けのための専用器具を用いているのか、当番制にしているのか、専用スタッフを確保しているのか、使用した器具を置く場所は統一されているのか、片付けの手順は明確にルール化されているのか、などがチェックするポイントとして挙げられます。これらに着目することで、残業時間の目安を付けることが出来ます。実際の就職・転職活動では、これらについて直接聞いてみることもよいでしょう。
3:歯科医院・クリニック内の掃除
 器具の片付けだけでなく、歯科医院・クリニック内の掃除も大切な仕事です。就職・転職活動を行う際には、器具の片付けと同様に、掃除の体制についても聞いておきましょう。職場によっては診療後の掃除は軽く済ませるだけにし、朝に掃除を集中的に行う場合もあります。
なお、掃除の範囲や求められるクオリティは歯科医院・クリニックによって大きく差があります。施設内の少しの診療スペースだけを掃除する場合もあれば、入り口や屋外の掃除を行う場合もあります。また、窓やイスなどを毎日掃除する場合もあれば、週に一回決められた曜日のみに掃除する場合もあります。

Ⅱ.歯科衛生士と残業代

 このような背景から、歯科衛生士は残業が多くなってしまうことが少なくありません。しかし、残業があるものの残業代が払われていない(いわゆるサービス残業)場合が少なくありません。そこで、残業代の実態についても頭に入れておきましょう。
1:残業の有無について
公益社団法人日本歯科衛生士会では5年ごとに勤務実態を調査しており、平成27年に報告された最新の「第8回歯科衛生士勤務実態調査報告書」では、8780人の勤務実態が明らかにされています。ここでは、常勤歯科衛生士の約74%、非常勤歯科衛生士の約30%に残業手当があることを明らかにしており、これは過去の調査と比較すると少しずつ上昇している傾向にあることが分かります。
 ただし、この調査では残業手当の有無のみが明らかとなっており、歯科衛生士に残業がそもそもなかったのか、それとも、サービス残業になっているのかは分かりません。なお、残業手当は、原則的に残業が発生すれば生じるものとなっています。サービス残業というものは許されていないことを頭に入れておきましょう。
2:毎月の残業代について
 歯科衛生士の残業時間は歯科医院・クリニックによって大きく異なります。時給が1000円と想定した場合の単純計算では、普通程度の残業時間である月々20時間であれば2万円、かなり多い残業時間である月々の40時間であれば、4万円になります。実際には時給が1000円以上の場合が多いですし、時間外労働(*一日8時間、週40時間を超えた労働)であれば割増賃金が適用されます。そのため、もっと多くの残業代が支給されることになるでしょう。残業が多い歯科医院・クリニックにおいては毎月の残業代が5~6万という場合もあるようです。
 このときに気を付けておきたいのは、残業代を多くもらっていた職場から転職する場合です。残業代がもらえる前提で転職したものの、転職先では残業ゼロといった場合には、月々の給与が大きく減ってしまうことがあります。給与条件だけでなく、残業に関する条件についても必ずチェックしておきましょう。
3:知っておきたい「みなし残業制度」
 歯科衛生士が働くときに知っておきたい制度として、「みなし残業制度」とよばれるものがあります(正式には「みなし労働時間制」といいます)。これは、一定時間の残業があらかじめの給料に含まれている制度です。例えば、月10時間のみなし残業制度をとっている場合には、10時間分の残業代が給与にあらかじめ入っているのです。もちろん、10時間の残業があらかじめみなされているため、月に10時間以上の残業をしたときにはじめて残業代が支給されることになります。なお、月に10時間未満であれば残業しなくても実質の残業代として手にすることが出来ます。
これは働く歯科衛生士にとってメリットがあります。まず、仕事を毎日早く終えることが出来れば、実際の残業をしなくてもみなし残業制度分の給与を手にすることが出来ます。また、固定給として金額が大きくなるため、毎月の給与に安定感が出てきます。ちなみに、歯科医院・クリニックにとってもメリットがあります。求人を出したときに給与条件を高く見せることが出来るため、それだけ目に止めさせることが出来ます。また、残業の請求が少なくなるために計算が楽といった点もあります。
これだけメリットの多いみなし残業制度ですが、一方で注意点もあります。まず、みなし残業制度についての理解が不十分である場合には「どれだけ残業しても残業を払わなくてもいい」と勘違いしていることが挙げられます。また、みなし残業制度という言葉から、「残業代が支払われない職場」と誤解を招くことが挙げられます。先述したように、給与条件の額面を高めることが出来るため、一見怪しい歯科医院・クリニックと見えてしまうことがあります。制度を正しく理解したうえで給与条件を読み解かなければなりません。そして最後に、「みなし残業があるから残業することが当たり前である」という風潮がある場合が挙げられます。歯科医院・クリニックとしてはすでに残業代を払っている感覚になっているため、このような風潮になってしまうのは理解出来なくもありません。これらを踏まえ、就職・転職活動を行う際には、残業代がどのような扱いになっているのかを確認する必要があるといえるでしょう。

Ⅲ.歯科衛生士が知っておくべき残業に関連した法律

 実際に仕事をしていると、歯科医師にお願いされて泣く泣くサービス残業をしている歯科衛生士さんも少なくないと思います。しかし、それによって仕事とプライベートのバランスを崩すことや、心身の不調に繋がることもあります。また、退職に繋がることもあるでしょう。そんなとき、残業に関連した法律について知っておくと心強い味方になってくれます。一般的な法律についてまとめましたので、これも頭に入れておきましょう。
1:法定労働時間
 労働基準法によって定められている、使用者が労働者に働かせることが出来る時間についての内容です。1日8時間・週40時間と定められており、これ以上働くことで残業になります。なお、残業は自由にどれだけでもさせてよいわけではありません。労働者に残業や休日出勤をさせるためには、36協定(さぶろくきょうてい、と読みます)に則って行わなければなりません。例えば、一週間の残業限度時間は15時間、一カ月間の残業限度時間は45時間、一年間の残業限度時間は360時間と決められており、これ以上の残業をすることは認められておりません。
2:拘束時間、労働時間、休憩時間、所定労働時間
 働くうえで、これらの用語については正しく理解しておきましょう。
・拘束時間:始業から就業までの拘束されている時間。
・労働時間:拘束時間のうち、労務を提供する時間。朝礼や片付けといったものも労働時間に含まれますし、夜勤などで必要とされる仮眠や休息についても該当します。
・休憩時間:拘束時間のうち、自由に労務から離れることが出来る時間。一般的に昼休みをイメージすると分かりやすいです。
・所定労働時間:職場によって定められている労働時間。法定労働時間は一日8時間とされていますが、所定労働時間はそれよりも短い時間である場合があります。
3:育児・介護に関わる残業の制限
育児・介護休業法により、残業は制限があります。歯科衛生士本人が小学校入学前の子を養育する労働者であり、労働時間外制限を請求したことを条件として、1カ月24時間・一年間150時間を超えた残業が出来ないようになります。実際に育児や介護に関わっている歯科衛生士さんがこの時間以上の残業をすることは少ないと思いますが、何かあった時には役立つ知識です。頭の片隅に入れておきましょう。
4:パートについて
 パートの場合には、残業ができるのか、できるとしたらどの程度出来るのかについて配慮する必要があります。そして、労働契約を結ぶ際に「残業なし」とした場合には、使用者は残業を命じることは出来ません。労働契約を結ぶ時には、条件をよく読まずに適当にハンコや署名をすることないよう、必ず記載されている内容をきちんと、いる確認するようにしましょう。

Ⅳ.さいごに

 本記事では歯科衛生士が就職・転職活動を行う際に知っておきたい残業に関する3つのポイントを紹介しました。歯科衛生士には残業の有無や程度はばらつきがあるものの、Ⅰ.残業が多い原因には、1)診療時間の延長、2)歯科診療で用いた器具の片付け、3)歯科医院・クリニック内の掃除があることが分かりました。また、Ⅱ.残業代の実際については、1)常勤歯科衛生士の約74%、非常勤歯科衛生士の約30%に残業手当があること、2)実際の残業代は多い人で5~6万円程度もらっていることがあること、3)みなし残業制度は正しく理解しておかないと時に損をすることを紹介しました。そして、Ⅲ.知っておくべき法律としては、1)法定労働時間、2)拘束時間や労働時間など、3)育児・介護について、4)パートについての要点を絞って紹介しました。この記事を参考に、就職・転職活動を行ってみてください。

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【著者:喜多 一馬】

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