歯科衛生士と退職交渉

歯科衛生士が円満に退職するために、知っておくべき退職交渉! 

歯科衛生士が歯科医院を退職するとき、どんな状況であれ円満に退職したいものです。しかし、実際には院長やスタッフと揉めてしまうことが少なくありません。そこで本記事では、歯科衛生士が「円満に退職するために知っておくべき退職交渉」について、解説したいと思います。あなたが退職を少しでも考えているならば、是非ともこの記事を参考にしてくださいね。

Ⅰ:退職に関するルール

 退職をするときには、退職に関するルールについて理解しておく必要があります。聞いたことがあるけども、意味を正しく理解していないということも多いですが、きちんと理解しておくことで、トラブルになったときにはあなたを守ってくれるものになります。

1:退職と雇用契約
 退職とは「労働者の意思に基づく労働契約の一方的解約」のことを指します。つまり、あなたが会社に退職の意思を伝え、雇用契約を終了させること、ということです。これは原則的には自由に行えるものですが、民法によってルールが決められており、遵守しなければなりません。
 「期間の定めのない雇用契約」においては、退職の2週間前までに退職届を提出することで退職が可能です。2週間前よりも短い期間で退職することは可能ですが、職場から損害賠償請求されるリスクがあります。
 そして、歯科衛生士に多い月給制や年俸制の場合にはルールが付け加えられます。これは「解約の申し入れは時期以後についてすることができる。ただし、当期の前半にしなければならない」というものです。
 例えば、月給制の場合には10月いっぱいで退職したい場合には10月15日までに退職意思を伝えなければなりません。また6ヵ月以上の年俸制などの場合には、3カ月前に退職届を提出することが必要になります。例えば、10月いっぱいで退職したい場合には7月までに退職意思を伝える必要があります。
 一方、「期間の定めのある雇用契約」においては事情が変わります。これは「令和3年3月31日まで働く」といった形で契約を結ぶもので、原則的にはこの期間内における退職は出来ません。ただし、やむを得ない事由(妊娠・出産・育児、家族の介護、賃金が支払われない、過剰な残業など)であればただちに退職可能です。
 また、特に重大な事由が無い場合でも職場と合意があれば、退職可能です。しかし、これらは職場から損害賠償請求される可能性があるために気を付けなければなりません。歯科衛生士が期間の定めにある雇用契約を結ぶことはほとんどありませんが、念のために確認しておきましょう。なお、本記事では「期間の定めのない雇用契約」を想定して記事が書かれています。
2:就業規則と民法
 先述した退職のルールは、民法によって規定されています。一方、職場では民法とは別に就業規則が定められています。多くは退職について「3カ月前までに退職を申し出ること」といったルールが定められています。これは民法(2週間)で定められたルールとは一致しません。このような時、就業規則よりも民法の方が優先されることを覚えておきましょう。つまり、基本的には「期間の定めのない雇用契約」に従って退職することが可能です。ただし、後述するような事情を想定すると、現実的にはどれだけ遅くても1カ月以上の余裕をもって退職届を提出することが円満退職に繋がります。

Ⅱ:退職時のトラブルと対処方法

 歯科衛生士が退職届を出したとき、よく遭遇するトラブルに下記のものがあります。対処方法とあわせて知っておきましょう。
1:退職を拒否される
 忙しい職場においては、「退職することで仕事が回らなくなる!」といった理由で退職を拒否されることがあります。しかし、民法の項で触れたように、退職はあなたの意思によって行うことができるものであり、拒否することは出来ません。そこで、退職の意思表示はメールや内容証明郵便を利用し、証拠を残しておくことが重要です。これは、証拠があることで「退職するなんて聞いていない!」などと言われないようにするためです。もちろん、円満退職となればこのような証拠は必要ありませんので、そうならないことが一番です。
2:有給消化が拒否される
 退職の際、残っている有給を消化したいと思うことは、どの歯科衛生士でも同じです。しかし、現実には有給をほとんど消化することが出来ずに、消滅させてしまう場合が少なくありません。特に、年度末の退職者が増える時期においては有給消化出来ないという話を多く聞きます。実は、有給休暇は法律では申請することで無条件に取得できるものとされていて、その理由を言う必要もありません。したがって、胸を張って有給消化してから退職しましょう。ただし、職場に迷惑がかかると円満退職とはなりません。事前に職場に退職の意思を伝え、可能な限り他の従業員の方のご迷惑とならないよう、有給消化することも周囲に周知してもらいましょう。ちなみに、最近ではすっかり減りましたが、有給休暇の買取りをしてくれる職場もあります。これは法律上の規定がありませんので、矯正することはできません。あくまでも消化できるように計画しておきましょう。
3:退職金がもらえない
 しばしば聞くトラブルとして、退職金がもらえない、ということがあります。
そもそも退職金制度を導入していない歯科医院も多いため、この場合に退職金が出ないことは当然ですし、請求することも出来ません。
 しかし、退職金制度があるにも関わらず、もらえない場合があります。この時には〇年以上勤続が条件など、それぞれの就業規則や雇用契約といった退職金制度の存在を証明できる証拠を準備し、その職場で勤務していた事実が分かる証拠(タイムカードなど)を揃え、弁護士等の専門家に依頼することで請求手続きを行うことが可能です。
 退職金はうやむやにされて泣き寝入りになってしまうことが多いものですから、必ず退職前に一度確認するようにしましょう。
4:今すぐ辞めたい
 「就職してみたら聞いていた条件と全然違う!」というトラブルはとても多いものです。このとき、給料や休日数が聞いていた条件よりもかなり少ないといった雇用契約内容に関連する部分の問題については、労働基準法によって即時に労働契約を解除することが可能です。これは正社員だけでなく、パートやアルバイトにおいても条件は同じです。「とりあえず3カ月は…」などと無理をせず、早めに退職することが心身にとっても良いことが多いものです。
5:退職を強要される
 歯科医院において聞くことは少ないですが、世間的に多いトラブルとしては退職を強要されることがあります。しかし、民法において退職の強要は不正行為とされているため、退職を受け入れる必要はありません。もし、すでに退職してしまった場合には、損害賠償請求や退職の取り消しを申し出ることが可能です。

Ⅲ:退職を伝えるときのポイント

 円満な退職を行うためには、受け入れられやすく、常識的に退職を伝える時のポイントをおさえておく必要があります。
 人間関係などによってうやむやにされてしまいがちだからこそ、知っておきましょう。
1:退職届と退職願
 退職する時には「退職願」を提出しましょう。万が一受理されなかった場合には、退職届を提出する、という流れになります。退職届を出すということは、一方的に退職を伝えるということになってしまので、法で定められていることとはいえ、これはできれば避けたいことですよね。
 円満に退職にするは、それまでの人間関係も大切になりますので普段からの振る舞いも大切にしましょう。
2:退職時期を配慮する
 一般的に退職は繋忙期を避けることが望ましいです。歯科医院では患者さんの数は繋忙期がありませんが、歯科衛生士の数が減ると、相対的に繋忙期になることがあります。年度末でない時期に、何らかの事情で生じた急な歯科衛生士の減少に被せないように配慮しましょう。
3:退職意思を安易に口にしない
 退職の意思があることを歯科医院の院長がスタッフ経由で耳に入ることは、非常に心象が悪いものです。退職意思は必ず院長もしくは上長、上司、同僚の順番で伝えるようにしましょう。つい、退職を心にすると周囲に言いたくなるものですが、実はそれによって円満な退職が阻まれてしまうことが少なくないのです。
4:不満を理由に退職しない
 退職には様々な理由があり、ネガティブな理由から退職を心に決める人も多いものです。しかし、退職前にそれを明言すると、周囲の心象はやはりよくありません。「辞める前に言いたい放題言っている…」とあなたの悪評が流れるものです。もしあなたが不満などを理由に退職する場合にも、明言しないようにしましょう。また、退職届を出すときにも、理由に記載しないようにしましょう。
 一般的な文面である、「一身上の都合により・・・」という内容が無難でしょう。
5:転職先を言わない
 退職するときには、転職先を聞かれることが多いものですが、あえて答える必要はありません。これは転職先の歯科医院と今の歯科医院を比較されてしまったり、退職する理由を詮索されてしまったりするためです。退職する意思が確かであることと、お世話になった院長やスタッフへの感謝の気持ちを伝えることに努めましょう。
6:仕事の引継ぎ
 退職願が受理されてから、仕事の引継ぎに取り掛かります。歯科衛生士として専門的な業務を担っている場合や、あなたしか使えないシステム等を活用している場合には、出来るだけ丁寧に、誰にでもわかるよう書類を作るなど、しっかりと引き継ぐようにしましょう。
 引継ぎでは余裕をもってスケジューリングし、必要において業務資料を準備することや関係書類の所在を明記するなど、引き継がれるスタッフに親切に行うようにしましょう。

Ⅳ.歯科医院の院長との関わり

 歯科医院では院長は一人の医師であり、一人の経営者でもあります。大病院や大企業と違い、多くの歯科医院は少ない人数によって運営されているため、一人の退職が経営に大きな影響を与えることもあります。それゆえに、歯科医院の退職は院長との関りが非常に重要になります。
1:院長を理解する
 院長は多額の借金をして歯科医院を開院しその返済をし、家族を養い、また、スタッフを養っています。ここには大きな責任感やプレッシャーが存在しており、腹をくくって歯科医院を経営しています。この点を理解して退職の意思を伝えるだけでも、あなたが良き理解者となり、円満な退職に結び付きます。もちろん、この時には院長や歯科医院への感謝の気持ちも自然と湧いてくるものです。
2:勤務期間や経験
 歯科医院は少ない人数で回しているため、人を育てる余裕があまりありません。そのため、業務に慣れたスタッフが一人辞めることはかなりの痛手になります。また、院長としては、歯科医院の戦力になった途端に退職されると辛いものがあります。この点を理解し、あなたがどのようなポジションであるのかを正しく認識して、立ち回ることが重要です。これによって、適切な言葉で退職意思を伝えることが出来るはずです。
3:勤務実績や態度
 どの職場でも同じことですが、真面目で一生懸命に歯科医院へ貢献してきた歯科衛生士が退職するときには、これからの人生を応援したくなるものです。これは、きっと歯科医院や院長、さらにはあなた自身が悩んで考えた結果に退職を選択したことが伝わるためです。
 一方で、不真面目な態度で働いてきた歯科衛生士には応援出来ない気持ちが湧いてしまいます。退職には日々の実績や態度が影響することは、どんな時にでも覚えておきたいものです。
4:院長の性格や考え方
 一番大切なのは、院長の性格や考え方です。というのも、どれだけ適切な手順やルールを用いたところで、歯科医院とは院長の判断によってすべてが決定されるためです。優しくスタッフへの理解があるような院長であれば、退職意思について話し合う機会が設けられたり、円満退職となるように配慮したりしてくれるでしょう。一方で、何に対してもすぐに怒るような院長であれば、どのような場合においてもトラブルになることがあります。もちろん、表面的にはトラブルになっていなくても、実は円満退職と受け止めていない院長も多々います。退職意思は院長の性格や考え方を理解したうえで、円満に進むように伝えることがとても大切になります。

Ⅴ.おわりに

 本記事では、歯科衛生士が「円満に退職するための退職交渉で知っておきたいポイント」を紹介しました。民法や労働基準法といった退職に関わるルールについて知ったうえで、退職後にも職場が円滑に回るように退職日を配慮することや、引継ぎを丁寧にすることが大切です。そのなかで、職場のスタッフが気持ちよく働けるように振舞い、院長の性格や考え方を考慮しながら院長と人間関係を築いていきましょう。歯科医院とは、良くも悪くも院長の権限が強く、人数が少ないため、退職に際してトラブルがおこりがちです。だからこそ、この記事で紹介した円満退職のポイントを理解し、退職の意思を伝えるようにしましょう。

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【著者:喜多 一馬】

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