歯科衛生士さんは、9割以上が女性です。ですので、出産子育てを経て、再び歯科衛生士として復帰する方も多く見受けられます。せっかく努力して取得した国家資格ですから、当然のことですよね。
日本では現在、少子化対策の一環として、待機児童解消へ様々な打開策が進められてはいますが、現実問題として、子育て中の女性がフルタイムでバリバリと働くには、限界があるのが正直なところです。
短時間勤務や、非常勤勤務としてでも働きたい、そんなママ歯科衛生士さんたちは、どんな問題に直面し、それに対してどのように対応しているのでしょうか。
ここでは、ママ歯科衛生士さんの方が必ずといっていいほど直面する、4つの壁の対応策をお伝えしたいと思います。
「1歳、3歳、小1、小4の壁」問題
①1歳の壁
まず、ママ歯科衛生士の皆さんがぶつかるのは、この「1歳の壁」かと思います。いわゆる保育園・保育所の待機児童問題ということですが、実際にどのような問題があるのでしょうか。働くママさんの中には、「子供が1歳になったら働こう」と考えている方が多くいらっしゃるかと思います。
正規雇用で働いていた場合、基本的には育児休暇は子供が1歳を迎える時まで、となっているため、その時に合わせて、保育園を探す、いわゆる「保活」をされていると思います。子育て支援の第一歩として、様々な政策が作られてはいますが、残念ながら、実情はどの自治体でも待機児童問題が完全に解消しているところはなく、認可保育園に入れる可能性は、そう高くありません。
また、運よく無認可保育園や小規模保育所に入れた場合でも、保育料が高く、保育料を払うために働いているような、そんな錯覚に陥ることもあるかもしれません。政府の対策で、0歳~2歳児の受け入れ態勢は、徐々に増えてきたものの、特に1歳児からでは入園希望者も多く、結局は待機児童になることも避けられません。
【対応策等】
まずは、早い段階から「保活」を始めることが大事です。早い人では、出産前からしている人もいるとのこと。また、出産にともない退職した場合などで、就職先が決まっていない場合も、仕事を始める半年くらい前には就職活動を始めたほうがいいと思います。
多くの保育園では、就職が決まっていないと受け入れてくれないというところがほとんどだからです。
②3歳の壁
最近新たに出てきた問題が、「3歳の壁」です。先に述べたように、0歳~2歳の待機児童解消へ、小規模保育所等の増設が進められていますが、そこで発生するのが3歳の壁となります。2歳までは預けられていたものの、3歳を迎えるときには預け先がなくなってしまうという問題が起こります。
地域によっては、満3歳児(3歳の誕生日を迎えた日)から入れる幼稚園もありますが、多くの場合、4歳児を迎える4月まで幼稚園にも入れず、保育園も受け入れてもらえず、またしても壁にあたってしまいます。
【対応策等】
まず一つとして、満3歳児から受け入れてくれる幼稚園を探しておくことが良いと思います。幼稚園では、延長保育で18時頃までは預かってもらえるところも多いので、職場と相談して勤務時間を考慮していただいて勤務を続けられるといいと思います。
そういった幼稚園が見つからない場合は、保育園に待機児童として登録したうえで、一時保育で預けて幼稚園(もしくは保育園)に入れる4月まで乗り切る、という手もあります。その場合は、勤務日数や時間を一時的に減らす必要が出てくるかもしれませんが、やむを得ないと割り切り、職場に丁寧にお願いしましょう。
③小1の壁
「小1の壁」、というのはよく聞いたことがあると思います。保育園、幼稚園では、19時まで延長保育をしてくれていたので働くことができていたけれども、小学校に入って、学童に入れたとしても、だいたいの自治体の学童は18時頃までしか預かってもらえず、ご自身の勤務時間の短縮や変更はもちろん、場合によっては、退職するしかない場合も多くあります。
ましてや、各自治体が設ける学童では入りきれず、最近は民間の学童保育もあるようですが、やはり、いわゆる待機児童もいます。そして、当然のことながら、民間の学童に入れた場合のほうが保育料は高いので、できるなら自治体の学童に通わせたいですよね。
【対応策等】
多くの自治体の学童は、すでに働いていること、さらに、勤務日数が多く、勤務時間が長いことが、自治体の学童に入れる可能性が高い条件となっているようです。ですので、保育園・幼稚園の段階から仕事をしているほうが学童に入れるには、有利と言えます。
また、自治体の学童に落ちてしまったときのことを考えて、早い段階から民間の学童の情報を集め、説明会に積極的に参加するなどして、選択肢を広げておくことも大事だと思われます。そして、預かり時間が短いことについては、やはり、職場とよくよく相談させていただくしかありません。
自宅と学童の距離も関係してくると思いますが、夕方遅い時間に一人で家に帰してお留守番をさせる、というのは防犯上かなり難しいところだと考えられるので、せめて、1年生の間くらいなど、17時までの勤務を許可していただくなどで、学童のお迎えに間に合う時間に勤務を終えられるよう、よく話し合って対応するしかないかと思います。
幸い、歯科医院さんは、子育て中のママさんたちが働きやすい環境を作ろうと、子育て支援を積極的に考えて勤務体系を作ってくださるところが多くあります。日頃から一生懸命仕事をしていき、人間関係も円満に築けているのであれば、許可していただけるのではないでしょうか。
④小4の壁
続いて、「小4の壁」ですが、多くの自治体の学童は、預かってくれるのは小学校3年生までです。せっかくやっとの思いで学童に入れたとしても、小学校4年生になると、放課後、長期休暇のときなど、子供をどうするか、と、また頭を悩ませなくてはなりません。
上に中学生や高校生の兄弟がいる場合や、近くに祖父母宅があって、預かってもらえる、というのであれば、さほど大変にはなりませんが、そういう恵まれた環境にいる方のほうが少ないと思われます。
【対応策等】
いきなり4年生になって一人でお留守番、というのは親子共にとても負担が大きくなります。ですので、3年生になったら、徐々に少しずつお留守番ができるように練習をしていきましょう。
はじめは30分、1時間、2時間とだんだんと一人でお留守番をする時間を伸ばしていくのが良いと思います。また、お留守番をしているときに何か問題が起こった際に電話できる、緊急連絡先を書いた紙をどこに貼っておくのか、電話の使い方を説明しておく(最近は、固定電話になれていないお子さんも多いです)など、子供とよく話し合っておくことが大事です。
また、自分が仕事中で電話に出られないこともあるので、困ったことがあったときなど、どうするのか、お隣の〇〇さんのところにいく、や、近所の同級生のお家に連絡する、など、子供がすぐに行きやすいわかりやすい対応案を決めておくといいでしょう。そのためには、日頃から学校関係、ご近所との人間関係をしっかり作っておき、何かの際には、ご連絡させていただきたい、と大人同士で話し、お願いしておくことが大切です。
そして、長期休暇の際には、習い事や、地域のスポーツイベント、子供行事に参加させるなどして、一人で長くいる時間をなるべく作らないようにする対策も必要です。長期休暇の場合は、1日のリズムをきちんと作ってあげられるようにしましょう。また当然ですが、火を使わない、来客があってもいきなりドアを開けない、インターフォンで対応した際にも「家に今、大人が誰もいない」ということを伝えないように、子供に話しておくことが身の安全を守ります。
このほかに、共通する問題・打開策としては、
- 職場での円満な人間関係を作っておくことで、子供の発熱や、園・学校行事で休みを取るときにも、スムーズに対応していただくことができると思います。
- 一時保育に預ける場合は、時間をよく医院側と相談しましょう。その理由として、午前中のみの勤務を希望するよりも、午後・もしくは夕方まで勤務できるほうが、求人の幅も多くなり、採用されやすくなることもあります。
- 託児所付き歯科医院が増えてきていますが、お迎えの必要がないので、残業指示が多くなることもあります。ご自身が無理のない程度で残業することも大切ですが、長時間預けることでの子供の状態、ご家庭の事情等を考えながら、できないときは、できない、という意思をしっかりと伝えることも必要です。
- インフルエンザの予防接種やその他任意予防接種も含め、体質に問題ない場合は、できる限り予防接種を受けておき、なるべく病気にならない対策をとっておきましょう。また、病児保育に事前に登録しておくことも必要です。(当日いきなりは預けられないので。)
- 保育園の待機児童になった際には、一時保育を何度か利用するなどしておき、利用実績を作っておくと入りやすい場合もあります。
- 4月の入園・入学時期は休まないといけないことも多くあるので、ご家族に代わりに行事に出ていただくことも含め、よく話し合ったうえで、職場の歯科医院にもご理解いただけるよう、早い段階で相談をしておきましょう。
- 勤務時間についてご理解いただく代替案として、働く側も、月に数回は土日も出勤できるようにすることや、週に1度は配偶者や家族と協力して、ほかの家族にお迎えを任せても大丈夫な体制を作り、終業まで勤務できるようにするなど、譲歩できる条件を少しでも整えておくことも大事です。
まとめ
以上、4つの壁をあげてきましたが、いずれも、すべて職場の歯科医院での人間関係を円満にして、問題が発生した際には協力をしていただける環境を作っておくことが大切です。また、子供を預ける問題で悩む期間は、長い目でみれば、数年に限られます。
その時は大変かと思いますが、ご自身の一人だけで頑張らないことが大切です。無理ばかりしていると、仕事を続けることがつらくなってしまうので、先輩ママの歯科衛生士さんに相談することや、配偶者やご家族との協力体制を作ることで、乗り切っていきましょう。
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