転職活動

訪問歯科診療はこれからの歯科衛生士に求められる職域とは?背景や働き方について解説

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歯科衛生士が働く場所は、歯科診療所や病院が多いものです。しかし、近年では高齢化が進んでおり、通院にて歯科診療を受けることの出来ない患者さんが増加しています。そこで、そのような方々に向けて訪問歯科診療が行われるようになってきています。

これからニーズがどんどん高まっていく訪問歯科診療ですが、その働き方や実務についてはまだまだ知らない歯科衛生士が多いものと思います。そこで、この記事では訪問歯科診療が増加してきている背景や、実際の実務・働き方・やりがい等について紹介します。

訪問歯科診療とは

訪問歯科診療とは、歯科医師や歯科衛生士が通院困難な患者さんの自宅や施設に伺い、歯科診療を行うことです。通院困難な患者さんとは高齢の方が大多数ですが、他にも、怪我・病気などを抱えている人も対象となっています。このような状況から、患者さん自身で口腔ケアを行いにくく、治療が必要な状態になりやすいという特徴があります。

訪問歯科診療のメリットは、自宅や施設で歯科診療を出来るというだけではありません。自宅で患者さんの状態を確認できるため、生活に沿った診療を行うことが出来ます。例えば、歯科医師や歯科衛生士が実際の食事場面を観察しながら細やかな関りを持つことが出来ます。

さらに、家族などの実際に介助されている方に指導することが出来るため、生活に即した口腔ケアを提供することも可能です。現在、訪問歯科診療を取り入れている歯科医院や医療法人が増加してきており、専門で行っているところもあります。超高齢化社会に伴い、今後はさらにその需要は増加することが見込まれています。

訪問歯科診療が増加する社会的背景

高齢者数の増加

現在、人口動態や長寿化を背景に、日本における高齢化が加速度的に進んでいます。内閣府の報告では、2017年における日本人の総人口は1億2,671万人であり、そのうち65歳以上の人口は3,515万人であるとしています。さらに、65~74歳の人口は1,767万人で総人口に占める割合は13.9%、75歳以上の人口は1,748万人で総人口に占める割合は13.8%であるとし、高齢者数および高齢化率が非常に高いことが分かります。

さらにデータを細かく見てみましょう。65歳以上の人口は、「団塊の世代」が65歳以上となる2015年に3,387万人であり、65歳以上の高齢者1人に対して15~64歳は2.3人になっています。ここから高齢者は増加の一途を辿り、2042年には3,935万人でピークを迎え、65歳以上の高齢者1人に対して15~64歳は1.3人になります。

その後、高齢者数は減少していくものの、2065年には高齢化率は38.4%に達して、約2.6人に1人が65歳以上、さらには約3.9人に1人が75歳以上となります。

要介護者数の増加

高齢者が増加することは、要介護者数が増加することにも繋がっています。こちらも内閣府の報告では、2003年には3,704万人であった要介護者は、2017年には6,068万人となっています。

要介護状態とは日常生活において何らかの介助を必要とするものです。その程度によって要支援や要介護などの認定が異なり、掃除や買い物といった生活の一部にサポートを必要とするものから、寝たきりまで様々な状態があります。いずれにせよ、要介護と認定されている場合には、歯科医院に通院することが困難であることが少なくありません。

これらをまとめると、日本では歯科医院に通院することが出来ない要介護者数が増加していることを背景に、訪問歯科診療のニーズが高まっているといえます。

訪問歯科診療の業務

訪問歯科診療の業務内容

訪問歯科診療で多い業務は専門的な口腔ケアです。口腔清掃・義歯清掃といった口腔衛生管理を中心とします。また、口腔機能や接触・嚥下機能を維持・改善するためのリハビリや、食事評価を行うこともあります。歯科診療所などで勤務している時には関わらない領域も多いですが、患者さんの口腔機能に関連したトラブルを全般に引き受けるような形になります。

訪問歯科診療の訪問先

訪問先には、患者さんの自宅だけでなく、有料老人ホームやグループホームなどの施設、歯科を有していない病院があります。患者さんの自宅を中心に訪問歯科診療を行う場合には、移動時間が多くなるため、訪問件数が少なくなることが特徴です。一方、有料老人ホームや病院を中心に訪問歯科診療する場合には、施設内の数名を対象とすることがあるために移動時間が少なく,まとまった人数を診療することが出来ます。どちらを主たる対象としているかは、医院によって異なります。

訪問歯科診療の対象者

訪問歯科診療では、通院出来ない方が対象になります。そして、先述したように、高齢化により要介護者が増加していることから、要介護状態の方を担当することが多くなります。しかし、一口に要介護状態といっても様々な状態があります。日常生活に多少の不便があっても普通に会話が出来る要支援・要介護1・要介護2の方もいれば、寝たきり・認知症・脳卒中などによって意思疎通が困難である要介護4・要介護5の方もいます。つまり、訪問歯科診療の対象者は幅広いといえます。

訪問歯科診療のスタッフ

訪問歯科診療では、歯科医師・歯科衛生士・ケアスタッフといった複数名のチームで訪問することがあります。このようなチームで診療を行うときには、幅広い診療行為が行えるだけでなく、それぞれの役割に応じた対応を行うことが出来ます。例えば、ケアスタッフが同行する場合には、患者さんの体位交換や移乗を担ってくれます。身体介助には慣れていないと、自分の腰痛を引き起こすといった不調を生み出すばかりか、患者さんの負担にも繋がります。専門的な介入を出来るケアスタッフは、ありがたい存在です。

一方で、歯科衛生士単独で訪問歯科診療を行う場合もあります。このような時には、歯科衛生士は歯科医師の指示に基づき、患者や家族の同意の上で専門的な療養の管理や指導を行います。具体的には、歯科医師と共同で管理計画書を作成し、計画に従った療養上必要な実施指導は毎回1対1で20分以上行います。

口腔機能スクリーニング・アセスメント・管理指導計画・モニタリング・評価等の手順は詳細に決められています。もちろん、本人や家族の希望に沿って目標・課題を決定していきます。ちなみに、歯科衛生士の単独訪問による居宅療養管理指導は、3ヵ月間行うことができます。もちろん、この場合には、ケアスタッフ等が行っている業務や関りも全て一人で行う必要があります。

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