歯科衛生士の免許を取得したけれども、歯科衛生士ではなく一般職として働こうかな…でも、歯科衛生士と一般職のどちらで働くことが良いのだろうか…。このような悩みを持つ方は少なくありません。それは、歯科衛生士は専門職であり、一般職がどのような仕事を行い、どのような状況にあるのかを知ることが少ないためです。
そこで、この記事では、歯科衛生士と一般職について、給料や年収・有効求人倍率・働き方・やりがいの観点から比較してみました。この記事を読んで、どちらで働くのが良いのか、一度考えてみてください。
一般職と総合職
一般企業においては、一般職と総合職というものがあります。しかし、歯科衛生士として働いていると、その違いがイメージ湧かないものです。まず、一般職と総合職の違いについて整理しておきましょう。
1.一般職とは
一般職とは、主として定型的な業務に従事する仕事を指します。事務職をイメージすると良いでしょう。事務職の特徴は、原則的に転勤を命じられることが少ないものの、管理職になることや大幅な昇給を見込むことが出来ないことです。また、一般職には女性が多いものですが、それは結婚や出産を経ても続けることが出来る業務形態であることも特徴的です。しかし、それゆえに人気が高く、また、後述しますが、今後は求人数が下がっていくともいわれています。
2.総合職とは
総合職とは、事業運営と中心を担う仕事を行い、企画・立案・営業・研究・開発といった領域があります。総合職の特徴は、役職に就くことや大幅な昇給を見込める一方で、転勤などの条件が生じることがあることです。これらを背景に、総合職は男性が多い状況となっています。しかし、近年では女性が活躍する社会になっており、総合職を希望する女性も少しずつ増えています。なお、実際の就職・転職活動においては、一般職と総合職で分かれている募集していることがほとんどです。どちらの働き方をしたいのかは、事前に決めておく必要があります。
3.エリア総合職とは
総合職として働きたいけれども、転勤には抵抗がある人に対してはエリア総合職という道もあります。これは仕事内容や求められる成果は総合職と同じレベルですが、遠方への転勤はないというものです。これだけ書くと好条件のように思えますが、もちろん年収が低くなってしまいます。
4.自分に合った働き方を選ぶ
いわゆる「一般企業」といっても、様々な働き方があります。もちろん、男女の採用比率・勤務条件・業務内容などの差があるため、一概にどれが良いというものはありません。大切なのは、自分に合った働き方を選ぶことです。これは歯科衛生士として働くうえでも大切なことです。自分がどのような働き方をしたいのか、今後どうなりたいのかなどを考えて就職・転職活動を行うようにしましょう。
給料・年収の比較
歯科衛生士と一般職では、どれほど給料や年収に差があるのでしょうか。厚生労働省や国税庁のデータを読み解き、比較してみましょう。
1.歯科衛生士の給料・年収
給料や年収については、厚生労働省の出している「厚生労働省賃金構造基本統計調査」というものを調べます。これは年に一度、厚生労働省が出している日本の全産業を対象とした賃金に関する調査です。平成30年度の調査によると、歯科衛生士の給料(月額給与)は268,000円、ボーナス(年間賞与)は423,000円、年収は3,639,000円となっています。
もちろん、このデータは平均であり、実際の給料や年収には職場による差が大きいものです。実際、いくつかの歯科診療所や病院の年収を調べてみたところ、350~390万円程度の幅があることが分かりました。とりわけ、大きな病院ほど年収は高い傾向にあります。また、昇給は職場によってかなりの差があり、ほとんど昇給がないような職場もあれば、十分な昇給がある職場もあります。職場によってはは30代後半で年収は400万円を越える傾向にありますので、キャリアが進むとどれくらいの年収になるのかを調べておくことも大切です。
2.一般職の給料・年収
一般業界の給与や年収について調べるときには国税庁の出している「民間給与実態統計調査」というものを調べます。こちらも「厚生労働省賃金構造基本統計調査」と同様に、給与に関わる情報を得ることが出来ます。歯科衛生士は女性が多いため、一般職女性のデータと比較します。平成27年度の調査によると、一般職女性の平均年収は276万円です。
歯科衛生士と比べると90万円ほど低い年収となっています。年齢別では30代前半に307万円がピークの年収となり、それ以降は下がる傾向にあります。歯科衛生士では年収は昇給によって横ばいから緩やかな右肩上がりにある傾向があり、一般職女性の方がやや低いといえるでしょう。
もちろん、女性の社会進出は広がってきていることから、年収格差も広がっている状況はあります。一般職女性と括っても、高収入の方もいれば、低収入の方もいます。これらをまとめると、歯科衛生士は一般職女性よりも平均年収は90万円ほど高く、経験年数や年齢によって昇給しやすいことが分かります。
求人倍率の比較
1.有効求人倍率とは
有効求人倍率とは、有効求職者数に対する有効求人数の比率を指します。これは労働市場と需給状況を示す代表的指標とされています。有効求人倍率が「1」のときには、1人の求職者に1人分の求人がある状態です。有効求人倍率が「10」のときには、1人の求職者に10人分の求人がある状態です。有効求人倍率が「0.1」のときには、10人の求職者に1人分の求人がある状態です。つまり、数字が大きいほど、就職先を見つけやすい状況だと考えることが出来ます。
2.歯科衛生士の有効求人倍率
平成31年度の歯科衛生士の有効求人倍率は21.0倍であり、非常に高くなっています。つまり、有効求人数の分だけ選択肢があるため、あなたの働き方に合った職場を選ぶことが出来ます。また、結婚や旦那さんの転勤などによって転職が必要となったとき、あるいは、職場の人間関係のトラブルに巻き込まれて転職が必要になったときなどに、転職先に困らないと考えることができます。実際、歯科衛生士が働くことの多い歯科診療所は全国に68,791施設もあり、全国どこに行っても困ることはありません。
3.一般職の有効求人倍率
一般職における有効求人倍率は、全体としては令和元年5月では2.07倍となっています。この数値だけをみても、一般職における就職・転職活動の難しさがうかがえます。これを職種別や業種別でみると、さらに動向がつかめます。職種では、最も求人倍率が高いIT・通信業は5.90倍、次いでサービス業は2.33倍となっています。一方、職種別では技術系(IT・通信)が7.96倍と高くなっていますが、販売・サービス系は0.84倍、事務・アシスタント系は0.23倍と低くなっています。
では、もしあなたが歯科衛生士の資格を持っていないとすれば、どのような職種に転職するでしょうか?上述したようなIT・通信関係に転職出来ればよいですが、比較的転職後のイメージが湧きやすい、販売・サービス系や事務・アシスタント系の有効求人倍率はかなり厳しい数字を示しています。一部のニュースにおいては、これらの一般職ではこれからのAIなどの進歩によって消えていく職種であるとも言われています。
実際、一般職は派遣やパートといった外注に切り替えている職場は多いものです。このように考えると、IT・通信などの特殊なスキルを持たない限り、一般職への就職・転職は、歯科衛生士への就職・転職と比べると難しいものであることがうかがえます。
働き方の比較
1.歯科衛生士の働き方
歯科衛生士には一般的に夜勤がなく、予約診療を行っている職場では19時頃には診療を終えます。もちろん、急患を受け付けている職場や、だらだらと診療を行ってしまう院長がいる職場ではその限りではありません。また、休日はカレンダー通りに設定している職場が多いため、有給休暇を利用することで連休を作りやすいともいえます。このように、歯科衛生士は、働く時間や曜日も決まっているために、プライベートの時間を充実させやすいといえるでしょう。
また、歯科衛生士は復職のしやすさが特徴でもあります。歯科衛生士は女性が多いために結婚や出産によって一時的に離職することが多いです。しかし、有効求人倍率からも理解できるように、非常勤勤務を欲している歯科医院は多いため復職しやすい状況となっています。実際、歯科衛生士として働いている人の約半分が非常勤勤務であるとされており、復職者が多いことがうかがえます。このように、勤務時間や休日といった勤務状況、復職のしやすさは、歯科衛生士の働きやすさを物語っているといえます。
2.一般職の働き方
一般職においても夜勤がないことがほとんどです。また、総合職と比較して、定時で仕事を終えやすい傾向があります。しかし、実際に定時で帰ることができるかは、歯科衛生士以上に、職場による差が大きいものです。就職・転職活動を行う時には、会社説明会・職場見学・OBからの情報収集を必ず行わなければなりません。
ちなみに、会社を深く知るためには、求職者・転職者向けの情報だけでなく、顧客や株主に対して開示している情報を見ることも重要です。例えば、公式HP・会社資料・業界新聞・ブログやSNS・IR情報(投資家情報)・四季報・転職系イベント・転職エージェント・転職口コミサイトなどが利用できます。近年では、無料で利用できる転職エージェントや転職口コミサイトも良質なものが揃ってきています、上手に利用するようにしましょう。
やりがいの比較
1.歯科衛生士のやりがい
平成27年「歯科衛生士の勤務実態調査報告書」によると、歯科衛生士にアンケート調査した結果「歯科衛生士の仕事はやりがいがある」と答えた人が80%以上でした。この背景には、国家資格として一生働き続けられること・専門性をもって仕事を行えること・人や社会に貢献できることが、その理由であるとされています。これからの社会においては、女性も働き続けることが求められます。そんななか、やりがいのある仕事を続けることは重要ではないでしょうか。
近年では医療・福祉の様々な領域において、歯科診療の重要性が示唆されています。例えば、歯科の問題は口腔機能や嚥下・咀嚼機能とも関連し、その結果としてQOLにも関連することが明らかとなってきています。今後さらに歯科診療の重要性が高まってくることを考えると、ますますやりがいを持って続けることが出来る仕事になっていくことが考えられます。また、それらの専門性を示すために、いくつもの認定資格があります。
歯科衛生士の認定資格は「認定分野A」と「認定分野B」というものがあり、研修と審査会を通過することによって認定証が交付され、専門性を示すことができます。認定資格を有していることは、転職活動を有利に進めるだけではなく、給料等の交渉時の武器にもなります。歯科衛生士としてさらなるキャリアアップを目指すときには、認定資格は役立ちます。
2.一般職のやりがい
一般職は総合職と比較すると、業務範囲が限られており、残業や転勤が少ないものの、昇格や昇給があまり期待できないという特徴があります。それゆえにやりがいが少ないとみられがちです。しかし、多くの仕事は一般職の方々の仕事が縁の下の力持ちとして作用することによって円滑に行うことが出来ます。そのため、誰かのサポートをすることが得意であり、好きであれば、一般職におけるやりがいを感じることが出来るでしょう。もちろん、プライベートの時間を確保出来ることも、一般職の利点です。
歯科衛生士と一般職、どちらで働くべきか
歯科衛生士の資格をもった方が就職・転職活動をする際に、歯科衛生士として働くのか、一般職として働くのかを悩むことがあります。今回の記事からは、歯科衛生士の方が平均給料は高く、昇給も見込むことができ、また、有効求人倍率の視点からは就職しやすいことが分かりました。一方、働き方は歯科衛生士も一般職も同じような枠組みで働くことが分かりましたが、職場によって様々であることは注意しなければならないといえるでしょう。
さらに、やりがいについては歯科衛生士ではこれから活躍の場が広がっていき、認定資格も多数あることから、キャリアアップしやすいことが分かりました。これらを総括すると、歯科衛生士の資格を取得しているならば、歯科衛生士として働くことが条件として良いと考えます。是非、この記事を参考にして、就職・転職活動を行ってみてください。
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【著者:喜多 一馬】